士業交流会とは?どんな会?士業者が集まるイベントの解説

士業交流会に参加したことがない人向けに、どんな人がどのような目的で参加するのか、「士業交流会とは」を分かりやすく解説します。弁護士会や税理士会などの士業団体が行う会との違いや、商工会や商工会議所の異業種交流会との違いもまとめています。
士業交流会とは? 士業者向けのネットワーキングイベント
士業交流会とは、弁護士・税理士・司法書士・行政書士・社会保険労務士など、いわゆる「士業」と呼ばれる専門家同士で集まる会のことです。なかには、特定の士業だけが集まる会や、士業を必要とする経営者や事業者を交えて交流する会もあります。
士業交流会の主な参加理由
- 協業できそうな士業者と知り合いになりたい
- 顧客から相談された案件を安心して紹介できる相手を探したい
- 自分の専門分野を補完してくれる他士業とのネットワークを広げたい
- 最新の法改正や制度の情報を交換したい
- 同じ立場の士業と交流し、孤立感を解消したい
士業はそれぞれが法律で定められた専門領域を持ち、単独では対応できない相談も多いため、他士業との連携が欠かせません。また、人によって得意分野が異なるため、ときには同じ士業同士での連携が必要になることもあります。
そのため士業交流会は、協業や顧客紹介につながる人脈形成の場として、昔から活用されてきました。オンラインが発達した現代でもその価値は変わらず、多くの士業に活用されています。
士業交流会の様子 – 初対面の士業者同士で名刺交換から始まる
そもそも「士業」とは?
「士業(しぎょう、さむらいぎょう)」とは、法律で業務範囲などが定められていて、名称に「士」がつく国家資格の専門職をまとめて呼ぶ言葉です。以下のように、主要な士業を「8士業」や「10士業」と呼ぶこともあります。
8士業 | 弁護士、弁理士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、土地家屋調査士、海事代理士 |
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10士業 | 弁護士、弁理士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、土地家屋調査士、公認会計士、中小企業診断士、不動産鑑定士 |
士業団体と士業交流会は何が違う? 弁護士会や税理士会との違い
士業として活動するには、基本的に法律で定められた士業団体(弁護士会や税理士会など)に加入しなくてはいけません。一方、士業交流会はあくまで任意で参加する自由参加型のイベントです。
士業団体と士業交流会の違い
士業団体(〇〇会) | 士業交流会 | |
---|---|---|
法的根拠 | あり | なし |
対象者 | 同じ資格を持つ士業 (税理士会なら税理士のみ) |
士業同士、経営者 (会によって異なる) |
加入・参加 | 必須 (一部の士業を除く) |
任意 |
主な役割 | 懲戒・研修・職務規律の維持 | 人脈形成・協業・情報交換 |
たとえば税理士は、税理士会という士業団体に加入しないと、税理士業務ができません。各地域ごとに「東京税理士会」や「関東信越税理士会」などの組織があります。総会や懇親会も開催されていますが、基本的にはフォーマルな雰囲気で、他士業との交流もできません。
一方、民間が開催している任意参加の士業交流会であれば、他士業も交えてフランクに話せます。士業交流会の参加者は、人脈づくりや協業のチャンスを求めて来場しているため、具体的な仕事につながりやすいのも特徴です。
【補足】税理士交流会と士業交流会の違い
税理士の例でいうと、税理士だけが参加できる「税理士交流会」が税理士会などの主催で開催されることもあります。ただ、勉強会的な性格が強く、開催数もそれほど多くありません。案件紹介や協業の目的であれば、他士業も参加する「士業交流会」のほうが適しています。
商工会の交流会と士業交流会を比較
士業交流会とよく比較されるのが、地域の商工会や商工会議所が主催する交流会です。どちらも「出会いの場」ではありますが、商工会が主催するビジネス交流会と一般の士業交流会とでは、参加者層などが大きく異なります。
商工会の交流会と士業交流会を比較
商工会・商工会議所の交流会 | 士業交流会 | |
---|---|---|
主な参加者 | 商工会等の会員 | 士業同士、経営者 |
主な役割 | 取引先開拓、地域活性化 | 人脈形成・協業・情報交換 |
特徴 | 士業同士の深い連携には不向き | 専門性の高い連携が可能 |
商工会や商工会議所の交流会は、基本的には商工会や商工会議所の会員限定のイベントです(非会員でも、料金を多めに払うことで参加できる場合もある)。年に1~2回ほど開かれ、地域の中小企業や個人事業主など、幅広い層の事業者が参加しています。
一方、士業交流会は、士業同士での連携や案件紹介を求めて参加する方が比較的多いです。会によっては、士業に相談したい経営者が参加することもあります。東京・大阪を中心とした都市部では、毎月のように士業交流会が開催されています。
士業交流会の主なメリット
士業交流会のメリットは、他士業との協業や最新情報の共有がしやすい点にあります。士業の特性上、独占業務や得意分野による棲み分けがハッキリしているため、こうした出会いの場を活かし、持ちつ持たれつの関係を築くのが重要です。
士業交流会の主なメリット
- 士業間で信頼関係を築くチャンスが得られる
- 紹介や協業で新しい案件につながる可能性がある
- 法改正や補助金などの最新情報を交換できる
- 独立開業したときに頼れる仲間や相談相手ができる
士業間で信頼関係を築くチャンスが得られる
士業交流会に参加すると、他士業や同じ士業の人と知り合いになれます。相続や事業承継のように、複数の士業が関わる案件では、信頼できる専門家を紹介できるネットワークを持っているかどうかが顧客満足度を大きく左右します。
紹介や協業で新しい案件につながる可能性がある
士業交流会は、案件や顧客を紹介し合える貴重な機会になりえます。各士業には基本的に広告規制があるため、一般企業のように大々的なCMは打ちづらいのが実情です。こうした規制に引っかからず営業活動ができるのも、士業交流会の魅力だと言えます。
法改正や補助金などの最新情報を交換できる
士業にとっては、法改正や補助金の最新情報をいち早く取り入れるのは非常に重要です。士業交流会では、こうした最新情報をリアルタイムで交換でき、さらに現場での具体的な対応事例やノウハウを知るチャンスもあります。
独立開業したときに頼れる仲間や相談相手ができる
士業交流会に参加すれば、同じ立場の仲間と悩みを共有したり、気軽に相談できる環境を得られます。とくに独立開業している人は、一人で業務に向き合う時間が長くなりがちで、孤立感をなくすためにも相談相手がいたほうが安心です。
士業交流会の主な注意点
士業交流会に参加する際は、すぐに結果を求めすぎないのが重要です。短期的な成果には結びつかなくても、地道に交流を継続しておくことで、案件が発生したときに声がかかりやすくなります。
士業交流会で長期的な関係構築を狙うには?
得意分野を明確に伝える |
---|
「相続税に強い税理士」「労務管理に詳しい社労士」など、得意な領域をはっきり示すことで、何かあったときに思い出してもらいやすくなる。 |
相手の専門領域を理解する |
出会った相手の得意領域を詳しく聞いておくと、顧客や他士業から相談を受けたときに的確で柔軟な対応がしやすくなる。 |
営業色を出しすぎない |
強引な売り込みは、かえって信頼を得にくくなる恐れがある。まずは情報交換や相談ベースで関係を築くのが効果的。 |
継続的に交流会へ参加する |
定期的に顔を出したり、交流会で出会った人にこまめに連絡したり、地道に継続することで成果につながりやすくなる。 |
もちろん、士業交流会に参加した当日に案件を紹介してもらえるラッキーなケースもあります。ただ、あからさまに案件狙いで参加するような人は、どうしても敬遠されがちです。
長い目で考え、信頼関係が作れそうな人を見つける、という心構えで参加しましょう。「案件をどんどん紹介できるよ」という人は歓迎され、その後の関係も良好になりやすいです。
まとめ
「士業交流会」とは、弁護士・税理士・司法書士などの士業が集まり、情報交換や人脈づくりを行う会です。士業者が活動の幅を広げる上で、定番の手段と言えます。すぐに仕事につながるケースもあれば、信頼関係を積み重ねることで長期的に成果が出ることもあります。
士業交流会の特徴 ‐ 士業団体や商工会の集まりとの比較
士業交流会 | 士業団体の総会 | 商工会の交流会 | |
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参加者層 | 士業同士 (経営者を含む場合も) |
団体の会員のみ (お歴々の方が中心) |
商工会の会員 (かなり幅広い) |
雰囲気 | カジュアル寄り | フォーマル | フォーマル寄り |
費用目安 | 4,000円前後 | 1万円以下 | 1万~3万円 |
主な目的 | 協業、案件紹介、情報共有など | 予算の議決、懲戒・研修・規律維持など | 取引先開拓、地域活性化など |
士業団体(弁護士会や税理士会など)の総会は、どちらかといえば付き合いで仕方なく参加するものという意味合いが強く、委任状だけ出して会場には行かない人も多いです。商工会や商工会議所の異業種交流会は、参加者層が雑多になりがちな印象から敬遠する人も多いです。
やはり仕事につながる人脈づくりや案件紹介を目的とするなら、他士業を交えて交流できる「士業交流会」が最適です。「専門外の案件が出てきたとき」や「他士業に依頼すべき相談がきたとき」に備える意味でも、士業交流会には参加しておいて損はありません。